| 中村 真也社長 「やる気になったのは、みんなが失敗していたから。」 |
漁獲量が極めて少ないことから「幻の魚」といわれる高級魚「クエ」
同社は、同時の「閉鎖循環式システム」と、地域資源である「みえ尾鷲海洋深層水」の
活用により、クエの陸上養殖に成功、「幻真グエ」と命名し、
全国への展開を図っている。
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事業を始められたきっかけは?
元々はFRP(強化プラスチック)の工場をやっていたんですけど、FRP業界が下火傾向にあったこと
から、どうしても自社開発の商品を持つ必要があったんです。そこで目を向けたのが水産養殖の世界
なんです。当時、ヒラメ陸上養殖が始まったばかりで、FRPの大型水槽というのがなかったんです。
そこで、組立式大型水槽の試作品を作り近畿大学の水産試験場に無償提供したところ、「使いやす
い」ということで大量の注文が入ったんです。
それで近大から評価されて、「今後養殖では色々なものが必要になってくるから、一緒に取り組まな
いか」という誘いがありました。そこから近大とのつながりができました。色んなものを作っては大学で
テストして、使えるものは先生が講演に行くときに付いて回って売り込み…ということをやってきました。
それでも、いずれは同業他社も同じものを作ってきますので、次に手がけたのが活魚輸送車です。
FRP の断熱材が入ったものを初めて手がけました。最初は、周りに他に活魚輸送車を作っている
ところはなかったんですが、徐々に普及し始め、他社でも活魚輸送車を作るようになってきました。
このままでは価格競争になるだけだ、と思いましたのでそれまでに得た、魚に関する技
術的な情報や知識を活かし、いずれは必要になるだろうと思っていた循環式の陸上養殖
の実験に取り組みました。
その際、大手電設メーカーとタイアップし、当社が技術指導をするという役割で契約を
交わしたんです。その頃、私は個人事業だったんですけど、大手企業とのタイアップをする
ということで、先方からの要望もあり、そのときに初めて株式会社になって、契約を
交わしました。
また、国の出資企業である蒲、上養殖工学研究所との共同研究に参加しました。 |
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| 中村 真也 社長 |
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その研究の期間は5年だったんですけど、最後の2年弱になった頃かな…その時に、仕上げとして、三重県の水産試験場にクエの養殖実験を持ちかけました。それまでクエの海面養殖は、全国的に
失敗していたんですが、循環式陸上養殖システムを使えば、可能性があると思っていました。
その成果は予想以上で最終的には水産学会での発表まで行きました。この方法を使うと、
今までとまったく違う結果が出て、今までに発表されたものを覆すことになりました。
その後、共同研究の契約も切れましたが、それまで手がけた陸上養殖の技術は、絶対に日の目を
見せてやりたかった。今は「魚」でやっているけど、他の水産物にも展開させられるはずだ、と。
それを実現するための資金調達の手段として、経営革新計画の申請を行い、承認を受け、
最終的には、補助金と投資の決定がされました。時期がうまくあったことが、今の事業を始める
一番のきかっけになりましたね。 |
養殖に関する経験などは昔からあったんですか?
僕はあまりなかったですね。元々設備の開発とかそんなのばかりやってました。
クエの養殖の知識は養殖場長、…息子なんですけど、彼を県の水産試験場に共同研究期間中出向
させ、県の技術者に徹底的に仕込んでもらったんです。クエの養殖をやる腹を決めた最後の決め手
は、「自信がある」という息子の言葉でした。それなら、システムを売って商売に結び付けて
いくのは俺の役割だから、お前は養殖場の責任の一切を持て、ということにして、
スタートを切りました。
ここでは、1人が知り得た技術的なことはみんなに教え、みんなが同じことができるようにしています。餌をやるときには、給餌機もあるんですが、機械でやっていたら、クエの調子が悪いのに気づかず、余計に弱らせるだけですから、手で餌をやるようにしています。それによって、クエの調子を見分ける経験もできます。
今は、誰でもいれば、緊急の場合の手の打ちようがわかっています。マニュアル化してあるから、それを見れば、みんなわかるようになっています。
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クエの養殖は、海洋深層水だからこそできるんですか?
深層水でなくてもできますよ。最初は人工海水でやってましたからね。大手メーカーとやっていたときは、普通の海水を電気分解して殺菌して使っていたし、海に近いところであれば、殺菌装置を通して除菌さえすれば使うことができます。ただ、殺菌装置を使うとものすごく高いものになりますからね。だから、うちは深層水を使ってその装置を省いているんですよ。
深層水は水温13℃くらいまでの低温ですから、細菌が繁殖しにくいんですよ。しかし、窒素分が高く、それをそのまま飼育水に使おうとすると、酸素量も低いんです。酸素供給して溶存酸素量を上げて窒素を飛ばそうとすると水温も上がってしまい、菌が入ってしまうと繁殖してしまう可能性もある。
よく聞かれるんですよ。「深層水を使うから大きくなるんですか?」とか。でも、持ってきた深層水にそのまま魚を入れたら、見る見る魚はおかしくなりますよ。当社では、そこに手を加え、時間をかけたものを使っています。それを知らずに、見よう見まねですると失敗します。 |
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| 同社の陸上養殖システム |
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クエに目をつけられたのは、地元の名産品だからですか?
自分がやる気になったのは、クエの養殖にみんなが失敗していたからです。
興味を持ったというか…ひょっとしたらこのシステムでいけるんじゃないか、と。勘だったんですけど、これは向いているんじゃないかと。だからどうしてもやってみたかったんです。
ただ、民間の企業がこれをやっても、信用に欠けるでしょ?だから、産学官でやることによって学会発表につなげ、それに使われたシステムだ、ということで信頼度を上げるという絵を描きました。 |
同社では、養殖したこのクエを「幻真グエ」と名づけ、ブランド化を進めている。 |
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社長の今後の目標は?
クエ市場を創造する事。その為には生産量を増やす事が必要となってきます。技術を要する事から、養殖業者のグループ化を考えています。
ファンドからの投資(出資) を受けた以上は事業を拡大し、株式公開を目指す。
それが第一の目標ですよね。
その為の実証プラントを自社で持つ事が第一段階でした。自分のところが先導する役割で、
新魚種にも挑戦していくのがここの役割だと思っています。自分のところの強みというのは
「開発力」だと思っておりますので、商品開発にも重点をおいていきたいですね。 |
これから起業する人に一言お願いします。
自分でやってみたいと思うことが自分の「情熱」なんでしょうね。
やるんだという計画を立てた以上は、まず行動すること!途中でぐらついたりしますけど、弱音を吐かないで
「何とかしよう」と思っている間は、突っ走れるものです。
自分に自信を持つことが必要だと思いますよ。 |
最後にお伺いしたいんですが、御社のホームページに書かれている
「一匹」というのは?
ああ、うちの取締役です(笑)。犬ですよ。
ここの建設工事が始まって、工事中のときにね…捨てられたのかな…?首輪の跡が付いていた犬が迷い込んだんですよ。それで、みんなが餌をやったりするんで、いつの間にか居ついてしまったんですよ。
どこかで離したりしても、また戻ってくるんです。
「これは、ここで飼ってくれ、と自分で言っているのかな?」と思いまして…。
みんなが、「何か縁があってうちに来た犬だから」と言うんで、もの凄く愛想がいいもんですから、飼うことになりました。
みんなの給料の中から餌代は徴収しています(笑)。 |
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この「取締役」の名前は「朝太郎」。
中村社長が陸上養殖業を始めて間もない頃に一緒に事業をしていた人の
あだ名である「朝太郎」から付けてもらったもの。
その方は、7年前にお亡くなりになったが、
社長がたまたまこの犬に「朝太郎」と呼びかけたら返事をしてきたので、
そのまま名前にしたとのこと。
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| (平成19年11月7日 インタビュー) |
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