谷口とよ美社長
「内部からの改革が無理なら外から崩すしかないと…。」 |
図書館の現場でビジネスを行う同社。
起業前は学校図書館の司書として、子どもたちが利用しやすい図書館を作ってきた
谷口社長は、司書としての経験も活かしながら、図書館用品の販売から、
新しい図書館の形に関する総合的なプロデュースまで手がけ、昨年、第6回女性起業家大賞の最優秀賞と、日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2008を受賞した。
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元々は三重県職員だったそうですね。
27年間県職員をし、その内26年は県立高校図書館の司書でした。
元県職員だというとびっくりされるんですよね。
公務員とベンチャー企業をやっている人間は対極にあると。元々公務員が合ってなかったんじゃないかとよく言われます(笑)。 本は好きでしたので、同じ県立高校で働くのなら司書をやりたい、という希望はありました。 |
谷口とよ美社長 |
図書館をビジネスの場に選ばれたのは?
当初はかなり反対されました。あなたが考えているほど簡単な世界じゃないから、と。
一個人が図書館を変えられるのかという不安はあったんですけど、内部から真っ向勝負で色々な運動をしても限界があったんですよ。それなら外から崩すしかない、と。
学校現場の動きなどからみて、図書館も時期が来たら一気に動くだろうと感じていました。その時に変な形で変えられたくないという想いがあったんです。
だったら、中のことを十分承知している私がやった方がいい、と考えました。 |
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元から起業しようと考えていた、という訳ではなかったんですか?
元々は、自分で起業するとは考えていなかったんです。ただ、振り返りますと、ビジネスをすることは、多分嫌いじゃなかったと思います。
(起業すると)命がけですからね…「失敗したら丸裸ですね」とよく言われるんですけど、いや、違います。丸裸じゃありません。切り刻まれます。命はとられないけど、丸裸じゃすまないです。 |
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司書をされていたときに、図書館の利用者を倍増させた実績もあると聞いています。
と、言うことは、内部からでも変えるのは可能ということではないですか?
27年間の県職員生活の中で4つの県立高校を回りました。その時は、先生方の協力も得て、生徒さんの力も借りて、チームワークで、土台から図書館を変えるような仕事をしてきました。私がいなくなっても基本が崩れないような図書館にしていこうと、「見せ掛けではなく変えること」を、徹底してやりました。
でも、やっぱり自分が県職員をしている間に行ける学校って、限られています。出会える生徒さんの数も限られますよね。
それに、本との出会いの機会は、高校に来てから一生懸命作るのではなく、小中学校のうちからきちんと提供してやりたいと…そんな想いがありましたので、外部から変えていく道を選択しました。 |
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子どもの活字離れは実際にあると感じられますか?
最初、どれだけ離れているのかという心配はあったんですね。ただ、実際にやってみて、私は「活字離れはしていない」と感じました。子どもたちが環境を与えられていないだけで。
世の中では、一般的には「活字離れ」と言われていますが…やってみて、やっぱり「離れていないな」と確信を持ちました。
「選ぶ能力」というのをきちんと養成してやればいいんです。昔は本も少なかったじゃないですか。少ないから飢える、ということもありましたけど、いいものには出会いやすかった。逆に、今は過剰に与えられて、種種雑多な色々なメディアがありますので、その分いいものに出会うのが難しい。だから、本当は飢えているのに、それがわからないという状況になっていると思います。 |
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昔から本が好きだったんですか?
本はやっぱり読みまくりましたね。中学校では、図書館の本を順番に読んでいきました。日本文学全集や、ニーチェから徳富蘆花まで。
祖母の語り聞かせや、小学校の先生の読み聞かせでイマジネーションを育まれた土壌はありましたが、本のある空間がほとんどない環境で育ったので、小学校4年生くらいのときに初めて学校に図書室ができて、本に出会ったという喜びを持っているんですけど、もっと幼児期から出会えていたら、本当に楽しかったかも知れないですね。 |
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今の仕事は天職ということでしょうか?
日経Woman(ウーマン・オブ・ザ・イヤー2008)の受賞の時にも、「天職を探す女性のロールモデル」として選ばれたというのもあったんですけど…。私は、そうじゃなくって、自分で天職にしていったんだ、と思っています。
正直なところ、5年間苦しかったですよ。沈みかけた時もありましたし。その時に新産業創造ファンド(※注 三重県産業支援センター実施事業)で助けていただいたというのがありましたので、私は、本社は三重県からは絶対に動かさないよ、恩義があるんだから、と社員にも言ってあります。
そういった中で、単なるビジネスではなく、マーケットを作っていく仕事…しかも、普通のサービスではなく、図書館サービスのような社会インフラを作っていく仕事ですよね。これが1年2年でできるはずがない。今にして思うと、5年かかって当たり前かな、と。
5年間は、会社が生き残れるかどうかという、その闘いだったと思います。時代が付いてくるか、というのと、会社がもつかどうかの闘いだったと。
色々な人に支えられながら、一方ではリーダーとして、あえて虚勢を張っていかなければならないこともありましたしね。本当にきびしい闘いの日々でした。 |
起業家として、女性であることのハンデはありましたか?
正直ありました。やっぱり恰幅のいい、いかにも俺は社長だ、という人であれば、皆さん安心するでしょ?女性であるという事は、プラスには働かなかったですね。
少なくとも支援を受けるという意味では、プラスにはならなかったです。
だから、起業家に対する本当のサポートのやり方というのは、私だったら、今ならできると思いますよ。 |
やりがいがもてそうな仕事ですね
そうです。その分、並大抵のしんどさではないですけど。
先日テレビの取材で、スタッフがインタビューを受けたんですけど、「リブネットってどういう会社ですか?」と振られた時、「社長が厳しいです!」と答えられました(笑)。「ムチとアメがビシビシ飛んできます!」って。その後「でも働きやすい会社です」って言ってくれたんです。
それを聞いたディレクターが、「この人は本当のことを言っていると思った」と言ってくれました。
社長は優しいですと言ったら嘘だろう、そんな会社は潰れますよ、と。
ええ、その通りです(笑)。
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社長の将来の夢は?
学校図書館に関するノウハウを全国に広めていって、全国の学校図書の水準を上げていきたいと思っています。だからコンサルティングに力を入れていきたいですね。
公共図書館に関しては、設計段階から関わっていく、「いい図書館を作る」という仕事をもっとしていきたいと。
あとは、あらゆる空間、あらゆる場所に本のある豊かな場所を作っていきたいです。
そのためのステップとして上場し、スタッフたちが豊かに暮らせる会社にしたいですね。
その結果として、社会にいいサービスを提供できる会社になると思っています。 |
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これから起業する人に一言お願いします。
大胆さと慎重さと…それと、貫く意志と柔軟さをしっかりもつこと。
意思とバランスですね。
それと、「いい人になろう」と思うな、ということです。好かれようとおもったらできないですね。
こんなこと言うと起業しようとする人がいなくなっちゃうかもしれないですけど(笑)。 |
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同社の図書館管理ソフト「くまたろうの森」のトップページ。
この製品は、三重県の県立学校図書館の管理システムとしても導入されている。 |
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(平成20年1月18日 インタビュー) |
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